大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪地方裁判所 昭和33年(行)50号 判決 1963年3月30日

原告 蔦屋製糖株式会社

被告 北税務署長・大阪国税局長

訴訟代理人 山田二郎 外七名

主文

原告の各請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者双方の申立

(原告)

(一)  原告の自昭和三〇年六月一日至同三一年五月三一日事業年度の所得金額欠損金額法人税額につき被告北税務署長が同三二年七月三一日になした更正決定はこれを取り消す。

(二)  右更正決定に対する原告の審査請求につき、被告大阪国税局長が同三三年五月一四日になした審査決定はこれを取り消す。

(三)  訴訟費用は、被告らの負担とする。

(被告ら)

(一)  原告の請求を棄却する。

(二)  訴訟費用は、原告の負担とする。

第二、当事者の主張

一、原告の請求原因

(一)  原告は、農林省より輸入粗糖の割当を受け、これを精糖することを業とする製糖業者である。

(二)  原告は、農林省の輸入粗糖の割当減少による業績不振のため、自昭和三〇年六月一日至同三一年五月三一日事業年度(以下本件事業年度と略称する。)の決算期において、五、八二四、九一四円の損失を生じ、(昭和三一年五月三一日現在の貸借対照表に計上された当期損失金、五、八六四、〇八五円より損金に算入されない法人税三九、一七一円を自己否認し、益金に加算した額で、別表一の「原告の計算欄」に記載のとおりである。)その旨被告北税務署長に確定申告したところ、同被告は、昭和三二年七月三一日附「法人税等の更正決定通知書」より、本件事業年度の所得金額を、三、六三五、九〇〇円、法人税額を一、四二九、三六〇円、差引法人税額を一、四二九、三六〇円、重加算税額を七一四、五〇〇円と更正する旨の決定をした。右更正の理由として、同被告が示した損益計算中(その計算は別表一の「被告らの計算」欄のとおりである。)原告が正当価格に売却した原告所有財産の帳簿価格と売却価格との差額中、一〇、六六七、六六二円を寄附金限度超として損金否認をしている点(別表一の番号(24))は承認することが出来ないので、原告は更に被告大阪国税局長に対し、昭和三二年八月二六日審査の請求をしたところ、同被告は、同三三年五月一四日右請求を棄却する旨決定した。

(三)  しかしながら、被告北税務署長のなした更正決定は、原告において、正当価格で売却した原告所有財産の帳簿価格と売却価格との差額は、損金に算入することが正当であるにもかかわらず、これを認めず、何等根拠なく一〇、六六七、六六二円を寄附金限度超として損金に算入しなかつた点において違法であり、同更正決定を維持した被告大阪国税局長のなした審査決定も、同様その点において違法であるから、取り消しを求める。(結局被告らのなした別表一に基く原告の所得計算中、番号(24)のみを違法とし、その他の計算は全部正当であることを認めるものである。)

二、請求原因に対する被告らの答弁

(一)  原告の請求原因(一)は認める。同(二)中、農林省の輸入粗糖の減少によつて、原告が業績不振となつたことは知らないが、その余は認める。同(三)は争う。

(二)  被告らの主張

本件事業年度における原告の所得算出の損益計算は、別表一の「被告らの計算欄」に記載のとおりであつて、結局原告の同年度の所得金額は、三、六三五、九七〇円である。ところで、原告は、被告らのなした別表一の損益計算中、番号(24)を除く部分を認めているから、本件の争点は、右番号(24)寄附金の損金不算入額のみである。

(三)  先づ別表一中、当事者間で、その計上について争のない番号(2)ないし(23)、(25)ないし(33)について、説明する。

(1) 別表一番号(2)別口勘定脱漏資産(仮払金)二、一四九、七六九円について。

原告が、故意に売上高を帳簿に記載しないで、法人税の申告から脱漏させた所得(以下単に別口勘定所得と称する。)を、原告会社代表者蔦屋幸三郎に対する仮払金であると認定し、益金に加算したものである。

(2) 別表一番号(3)別口勘定脱漏資産(貸付金)五七〇、〇〇〇円について。

原告が、別口勘定所得をもつて、訴外蔦屋製菓株式会社(以下単に訴外会社と称する。)に対し、貸付けていたものを、簿外貸付金であると認定し、益金に加算したものである。

(3) 別表一番号(4)別口勘定脱漏資産(車輛運搬具)五〇〇、〇〇〇円について。

原告が、別口勘定所得をもつて、取得したオートバイを、簿外資産であると認定し、益金に加算したものである。

(4) 別表一番号(5)別口勘定架空負債(借入金計上を否認したもの)一、六八二、九二二円について。

別口勘定所得を原告会社の本勘定に計上するため、蔦屋幸三郎から借入れたように記帳し、(架空の借入金を計上)、それだけ決算利益を減少せしめていたので、これを否認し、益金に加算したものである。

(5) 別表一番号(6)別口勘定架空負債(借入金計上を否認したもの)九〇、〇〇〇円について。

別口勘定所得を原告会社の本勘定に計上するため、常見幸男名儀の架空借入金を計上して、それだけ決算利益を減少せしめていたので、これを否認し、益金に加算したものである。

(6) 別表一番号(7)別口勘定架空負債(支払手形計上を否認したもの)三一四、八〇〇円について。

別口勘定所得を原告会社の本勘定に計上するため、服部豊名儀で三一〇、〇〇〇円、北村百一名儀で四、八〇〇円の架空の支払手形勘定を設け、それだけ決算利益を減少せしめていたので、これを否認し、益金に加算したものである。

(7) 別表一番号(8)別口勘定架空負債(仮受金計上を否認したもの)二、〇〇〇、〇〇〇円について。

別口勘定所得を原告会社の本勘定に計上するため、たまたま増資の時期にあつたので、増資株式証拠金名儀で架空の仮受金(負債)勘定を設け、それだけ決算利益を減少せしめていたので、これを否認し、益金に加算したものである。

(8) 別表一番号(9)及び(27)別口勘定未払金の否認、認容について。

原告会社の本件事業年度前において、否認された結果、益金に加算された架空の負債二六〇、七五四円と益金から減算された簿外負債一八五、八六三円(山本工務店名儀の未払金)を、原告は本件事業年度において、正当な経理に計上してきたので、税務計算上、二六〇、七五四円を益金から減算し、一八五、八六三円を益金に加算し、所得金額の計算を調整したものである。

(9) 別表一番号(10)脱漏資産(未収利益)五一九、二六三円について。

蔦屋幸三郎に対する仮払金の累積額に対し、市中銀行貸出金利に準拠する割合により未収利息を計算し、益金に加算したものである。

(10) 別表一番号(11)脱漏資産(仮払金)七六、九五〇円について。

原告会社役員呉幸五郎個人が負担すべき保険料を、原告が立替えて、損金に計上していたため、これを否認し、同人に対する仮払金とみて、益金に加算したものである。

(11) 別表一番号(12)架空負債(買掛金計上を否認したもの)二七八、〇八四円について。

高岡商店に対する買掛金で値引等により支払不要になつたものは、それだけ過大負債となるからこれを否認し、益金に加算したものである。

(12) 別表一番号(13)架空負債(預り金計上を否認したもの)三三一、〇六七円について。

役員給料名儀で、架空の預り金を計上していたので、これを否認し、益金に加算したものである。

(13) 別表一番号(14)架空負債(預り金計上を否認したもの)三七、七一〇円について。

北村百一からの預り金として経理しているが、架空なものであるからこれを否認し、益金に加算したものである。

(14) 別表一番号(15)及び(29)役員賞与引当金の取崩しとその目的支出役員賞与引当金を取崩して、役員賞与の支払いに充てたものである。役員賞与引当金は、利益剰余金項目で、これが減少したから八九、二五〇円を認容し、これを益金より減算し、他方役員賞与は損金でないから、同額を損金不算入として否認し、益金に加算したものである。

(15) 別表一番号(16)及び(30)減価償却の否認、認容について。

法人税法施行細則第三条の三の規定によつて、事業年度の中途で取得した固定資産の減価償却範囲額を月割計算し、それに基く減価償却超過額一六、五八〇円を否認し、これを益金に加算し、既往で否認した減価償却超過額のうち、一〇〇、〇四四円を当期の損金として認容し、益金より減算したのである。

(16) 別表一番号(17)及び(31)仮払法人税額の否認、認容について。

仮払金で支出した法人税額六一二、二二〇円は、既に社外に流出しており、観念的には資産を構成しないので、これを益金より減算し、当該部分にかかる課税を除外することとするが、法人税法上、これを損金とすることは出来ないので、同額を益金に加算し、調整したものである。

(17) 別表一番号(18)損金計上の府民税及び市民税計九一、三〇〇円の否認について。

府民税及び市民税は損金ではないから、府民税及び市民税計九一、三〇〇円の損金計上を否認し、益金に加算したのである。

(18) 別表一番号(19)損金消却の仮払府民税二〇、五九三円について。

前期において、仮払金に計上していた府民税を当期に損金に振替えたため、これを否認し、益金に加算したものである。

(19) 別表一番号(20)(21)(32)税金引当金の目的外支出及び仮払市民税及び仮払法人税の消却について。

仮払市民税三〇、八九〇円と仮払法人税六〇〇、六八〇円を税金引当金と相殺したもので、引当金を減少せしめたから、各同額を益金より減算するとともに、仮払市民税及び仮払法人税は、既に益金より減算されていたものであるから、これを否認し、益金に加算し、税務計算上、調整したものである。

(20) 別表一番号(22)前記認容済の未納事業税の当期損金計上額九二、八九〇円について。

損金算入の認められる事業税を、前期では一、一五八、三九〇円引当認容し、益金から減算したのであるが、実際納付した金額は、七九〇、二〇〇円であり、これを損金に算入する場合、二重に減算することになるから、当該金額を益金に加算することとし、当期において発生した事業税六九七、三一〇円を損金に算入するものとして、益金から減算した場合の差額相当額でこれを益金に加算したのである。(結局当期では、事業税として一、〇六五、五〇〇円認容されたことになる。)

(21) 別表一番号(23)(33)前期中間分事業税額の否認、認容について。

前期で仮払支出したことにより、既に益金から減算された二六、八六〇円が、当期で損金に振替えられたため、それを否認し、益金に加算するが、本来損金に算入されるべきものであるから、これを認容し、益金より減算し、税務計算上、調整したのである。

(22) 別表一番号(25)別口勘定前期架空負債(支払手形)を当期益金に計上したもの一、〇〇〇、〇〇〇円について。

前期で、架空に計上して否認され、既に益金に加算された馬場鉄次名儀の支払手形一、〇〇〇、〇〇〇円を、当期に増資株式証拠金名儀の仮受金の一部に振替えられたので、前記(7)別口勘定架空負債(仮受金計上を否認したもの)として否認し、益金に加算したので、重複するため、これを認容し、益金より減算したものである。

(23) 別表一番号(26)別口勘定前期架空負債(預り金)を当期益金に計上したもの一〇〇、〇〇〇円について。

前期で架空計上して否認され、既に益金に加算された生野繁木名儀の仮受金一〇〇、〇〇〇円が、当期に増資株式証拠金名儀の仮受金の一部に振替えられ、前記(7)別口勘定架空負債(仮受金計上を否認したもの)として否認し、益金に加算したので、重複するため、これを認容し、益金より減算したものである。

(24) 別表一番号(28)脱漏負債(未払消費税)八、六六四、六〇〇円について。

当期の商品の売上に対する消費税の未払金が計上されていなかつたので、これを損金として認容し、益金より減算したものである。

(四)  次に本件の争点である別表一番号(24)寄附金の損金不算入額一〇、六六七、六六二円について、説明する。

(1) 原告は、昭和三一年中に、原告所有の別表二記載の機械器具等を訴外会社に対し、同表(ハ)欄記載の譲渡価格で譲渡し、これによる売却損一〇、八七三、二二七円(同表(イ)欄の帳簿価格の合計類と同表(ハ)欄の譲渡価格の合計額との差額)を計上し、本件確定申告に及んだものである。

しかしながら、原告の計上した右売却損をそのまま全額法人税法上、損金に算入することは出来ない。即ち、昭和三一年二月頃、原告は大阪国税局調査査察部査察課の法人税法違反嫌疑による犯則調査を受け、その結果膨大な所得の隠匿を発見せられ、総額六、三七六、二八〇円の法人税等の追徴を受けなければならないことになつた。そこで、原告は、税金追徴による資産の減少を危惧し、操業状況並びに成績良好な製菓部門を分離し、別会社を設立することによつて、その部門に属する資産に対する税務当局の追求を逃れようと図つた。

右のような意図を以つて、右別会社として訴外会社が、同年三月二日設立されたのであるが、その際、原告の従業員のほぼ全員が、訴外会社の業務に従事することとし、且つ原告の資産の殆んど大部分を占める別表二記載の機械器具等が、当時の時価をはるかに下廻る低廉な価格で、訴外会社に譲渡されたのである。(但し半製品のみは、適正な時価相当価額で譲渡されたものと認める。)ところで、合理的な経営をなすべき筈の株式会社が、その資産を他に譲渡する場合は、時価を基準としてその譲渡価格を決するのが、通常であると考えられるところ、右のごとき意図を以つてなされた原告と訴外会社との間の右機械器具等の売買取引は、正常な商取引ではないから、当然その譲渡価格も、両者間に恣意的に決定されたものであつて、正常な売買価格(時価)と認めることは出来ないのである。

(2) 次に原告の右譲渡資産の適正な時価について解明する。

(イ) 法人は、自己の資産、負債等財産内容を明らかにして利害関係人に示すため、毎年一回は決算することを強制されているが、この決算において、示される資産等の価額は、会社内部のためでなく、利害関係人に対しても、客観的に正確に法人の資産内容を明らかにしているものであり、その資産等の価格は、通常期末において、そのまま使用収益されるとして譲渡される場合に付せられるべき譲渡価格を適正に表現しているものである。

それで、法人税の所得計算においても、資産の評価については、時価を超えず、また時価を下らぬよう規制されているので、決算書類(貸借対照表)に記載されている資産が、期末においてそのまま使用収益されるとして譲渡される場合においては、通常決算書類に公表されている帳簿価格をもつて譲渡資産の適正な時価であるとして取扱うべきものとされてきている。原告会社の帳簿価格を無視した評価額は、妥当なものとは到底いえない。

(ロ) それに、資産の譲渡価格は、譲渡の目的または当事者の経済事情によつて異なることは、経済の原理である。現在の企業を解体分離して売却し、企業を組成する各資産を個別的にばらばらに市場価格をもつて評価する場合と、現在操業中の資産を譲受人においてそのままで引続いて同一事業が営めるよう有姿のままで一括して売却し、企業を組成する資産の機能力及び収益力をも合せて評価する場合とでは、たとえその資産の種類が同一のものであつても、これらの場合の評価額は異なるのが当然といえる。即ち、前者の場合には、当該資産はいわゆる新品性を喪失しているため、その客観的な時価は、通常の市場価格より低いものであるに反し、後者の場合には、当該資産が本来の事業目的を達成するために装置されているままで、譲渡されるものであるので、営業の譲渡と同一視されるから、この場合の評価額には、当該資産の価値はもとより、この機能価値をも考慮に入れるべきであつて、その評価額は前者の場合と比べて単純に断定しがたいものであり、通常前述のとおり決算書類に表現されている帳簿価格をもつて当該資産の適正な時価と認定するほかないものである。

(ハ) 前述のとおり、特定の事情のもとにおける譲渡資産の適正な時価は、通常会社の帳簿価格に基づくべきものであるが、なお、譲渡資産のうち固定資産に関しては、当該資産の減価償却方法につき「定率法」が採用され、正規の償却計算が行なわれている場合には、(償却方法については別に定額法があり、法人の自由選択ができるものである。)帳簿価格に基づいて当該時価を認定することに一層の合理性があるということができる。即ち、「定率法」を採用した場合、会計理論的に一定の耐用年限の予定された機械類のような資産については、その年限の中途においてたまたま機能的減価が偶発しても、その犠牲を軽減せしめることのできる長所を有しているといえる。この方法による償却計算をした場合の特徴は、初年度能率の高い時に、多額の償却を行ない、後年能力が減退することにより、たとえ修繕維持のため、支出が増加しても、その未償却残高は減少しているから、当該資産に対する負担は、耐用期間にわたつて公正に分配することとなるのである。而して償却計算を行なう場合の耐用年数とは、統計的、科学的に測定された通常の効用持続年数であつて、広く普通的に認められたものであるから、おのおのの資産について、この耐用年数に基づく償却率を適用した毎期末の残高は、定額法による場合に比して実際の評価額を適正に表現しているものである。それで、定率法の償却計算による残高は、会計学的にも合理的に実質に即応した価格を表現しているものといえるのである。本件において、当該譲渡資産は取得後一年ないし二年以内で、一括譲渡しているのであつて、この場合において、定率法により減価償却の行なわれた帳簿価格をもつて、当該資産の適正な時価と認めることは長年にわたつて堆積された実務経験から帰納されてきたところであり、実務上広く実践されてきているところである。

(ニ)1、以上要するに、原告は、製菓業のために操業していた一切の機械器具等(譲渡資産)を、訴外会社において、そのままで引続いて同一事業が営めるよう有姿のまま一括して売却したのであり、また譲渡資産のうち、固定資産については、定率法に基づく減価計算が実施されていたのであり、なお譲渡資産の大半は取得されてから一年若しくは二年以内のものであつたから、このような状況の下においては、前述のとおり、譲渡資産について、その帳簿価格が適正な時価を表現しているものと解すべきである。譲渡資産の帳簿価格ないし耐用年数を全く無視し、また譲渡目的を全く考慮に入れないで、譲渡資産のそれぞれの新品販売人をして、専門外の中古品としての売買価格を一つ一つばらばらに値踏みさせているにすぎない甲第二号証の一ないし七の記載は、本件譲渡資産の適正な時価を示しているものとは到底いえない。

2、固定資産(機械器具、車輛運搬具及び什器備品)の適正な時価について。

固定資産の適正な時価は、前述のとおり、譲渡前の帳簿価格(別表二の(イ)欄記載のとおりである。)である。

3、棚卸資産(原材料、製品、半製品、及び補助材料)の適正な時価について。

棚卸資産のうち、原材料、製品及び補助材料については、減少による減損等もなく、同じ営業を行なう訴外会社が譲受けており、それらは先入先出法に基く適正な評価(法人税法施行規則第二〇条)により帳簿に計上されていたので、個々の資産について改めて原価計算を行なうまでもなく、その帳簿価格をもつてその適正な時価と解したのである。もつとも、棚卸資産のうち半製品については、それがいろんな生産工程にあつた多様な仕掛中のもので、現物のまま残存しておらず、またその多様性を確認する方法がなかつたので、原告主張の譲渡金額をもつて時価と解することにしたのである。

(3) 従つて、被告らは、原告と実質的資産内容並びに経営内容の異らない訴外会社に対する資産譲渡により、原告に損失金を計上せしめることは、一面右資産につき任意且つ一時多額の減価償却を許すことにもなり、会計理論上も明らかに不当であり、他面譲渡資産の適正な時価は、半製品を除き帳簿価格に表現されているものであるから(別表二(ロ)欄のとおり)原告主張の譲渡価格(別表二(ハ)欄のとおり)は右適正な時価に比べて著しく低額なものであるので、原告の計上した譲渡損失を否認し、右適正な時価と右譲渡価格との差額を、原告が訴外会社に贈与したものと認め、その差額に相当する金額を、法人税法九条三項にいわゆる寄附金として取り扱い、同施行規則七条一項の規定により損金算入限度額を計算し、右寄附金中、その限度額をこえる部分は、本件事業年度における原告の所得の計算上、損金に算入しないこととしたのである。

(4) そこで、原告の課税所得金額を算出する。

(イ) 法人税法施行規則第七条にいわゆる所得金額(損金算入限度額をこえる金額を加算するまえの原告の所得金額)の算出について。

原告が、本件事業年度の貸借対照表に当期損失金として計上した五、八六四、〇八五円(赤字)に、法令の定めるところと被告らの調査により税務計算上損金に算入されないものの合計額一〇、三一七、六九一円(別表一の番号(2)ないし(23))を加算し、これらの合計額から税務計算上所得金額から控除すべきものの金額一一、四八五、二九八円(別表一の(25)ないし(33))を減算すると、その差引所得金額は、七、〇三一、六九二円(赤字)となる。而して、この金額に被告らが否認した本件の譲渡損失額(寄附金額)一〇、七三〇、一四二円を加算した結果、その合計額は三、六九八、四五〇円となるから、この金額が損金算入限度額を計算するための所得金額となるのである。

(ロ) 損金算入限度額の算出について。

原告の本件事業年度の資本金額は一三、〇〇〇、〇〇〇円、所得金額は右三、六九八、四五〇円であるから、前者に千分の二、五を(いわゆる資本金基準)、後者に百分の二、五を(いわゆる所得基準)、各乗じて算出した金額の合計額の二分の一に相当する金額六二、四八〇円である。

(ハ) 損金不算入額の算出について。

損金不算入額は寄附金として取り扱われる金額(別表二(ロ)欄記載の機械器具等の譲渡時の時価の合計額と同表(ハ)欄記載の譲渡価格の合計額との差額である同表(二)欄記載の金額一〇、七三〇、一四二円)から右損金算入限度額六二、四八〇円を控除した金額一〇、六六七、六六二円である。

(5) そこで、被告らは、右寄附金の損金不算入額一〇、六六七、六六二円を原告の所得を算出するにあたり、その益金に加算したのであるから、以上の点については、何らの違法もない。

三、被告らの主張に対する原告の反駁

(一)  原告は、昭和三一年中に、原告所有の別表二(イ)欄記載の帳簿価格が附せられた機械器具等を訴外会社に対し、同表(ハ)欄記載の譲渡価格で譲渡し、これによる売却損一〇、八七三、二二七円を計上し、本件確定申告に及んだことは認める。

(二)  しかし、原告が、訴外会社を設立するに至つたのは、原告の工員の約八割が製菓部門に働いて居り、しかも製糖事業の方が、農林省からの輸入粗糖の割当減少のため、不振であつたので、工員達の希望もあつて、工員達の原告からの退職金をもつて、製菓部門を独立させることにしたのである。

従つて、訴外会社は、従来から製菓部門に使用していた機械設備什器原材料等を譲受けて製菓事業を継続することになつたが、訴外会社新設の趣旨が、製糖事業の不振、工員の生活確保という点にあることから、新設会社の基礎をとくに堅固にする必要があつた。それで、機械設備什器等の固定資産は過大評価による評価益など出さないよう特に慎重を期し、鑑定人に依頼して個別的に評価せしめた。また原材料、製品等についても、同様の趣旨から必ずしも帳簿価格に拘泥せずに評価したのである。従つて、被告ら主張のごとく、原告において、訴外会社に対し、右資産の譲渡前帳簿価格と譲渡価格との差額に相当する金額を贈与したものと認めることはできないのである。

第三、証拠<省略>

理由

一、原告は、農林省より輸入粗糖の割当を受け、これを精糖することを業とする製糖業者であること、原告が本件事業年度の決算期において、五、八二四、九一四円の損失を生じ(昭和三一年五月三一日現在の貸借対照表に計上された当期損失金五、八六四、〇八五円より損金に算入されない法人税三九、一七一円を自己否認し、益金に加算した額で、別表一の「原告の計算欄」に記載のとおりである。)、その旨被告北税務署長に確定申告したところ、同被告は、昭和三二年七月三一日附「法人税等の更正決定通知書」により、本件事業年度の所得金額を三、六三五、九〇〇円、法人税額を一、四二九、三六〇円、差引法人税額を一、四二九、三六〇円、重加算税額を七一四、五〇〇円と更正する旨の決定をしたこと(なお、その更正の理由は、別表一の「被告らの計算」欄記載のとおりである。)、これに対し、原告は、被告大阪国税局長に対し、昭和三二年八月二六日審査の請求をしたところ、同被告は、同三三年五月一四日右請求を棄却する旨決定したことは、当事者間に争がない。

二、次に、被告北税務署長が「更正の理由」として示した別表一記載の原告の所得金額に対する計算中、番号(24)を除く部分は、原告も、正当であることを認めているから、本件の争点は、右番号(24)のみであつて、要するに、前記確定申告において、原告が、訴外会社に対し、本件事業年度中に、その所有の別表二(イ)欄記載の帳簿価格が付せられている機械器具等(以下本件譲渡資産と略称する。)を、同表(ハ)欄記載の譲渡価格で譲渡し、これによる売却損一〇、八七三、二二七円(同表(イ)欄記載の帳簿価格の合計額と同表(ハ)欄記載の譲渡価格の合計額との差額)を計上したこと(以上の事実も当事者間に争がない。)に対し、被告北税務署長において、本件譲渡資産(但し、そのうち、半製品については、原告の譲渡価格が適正な時価であると認めたので、これを除く。)の適正な時価は、別表二(イ)欄記載の各帳簿価格であるから、原告は、訴外会社に対し、右資産を適正な時価を著しく下廻る低廉な価格で譲渡し、それによりその適正な時価と前記譲渡価格との差額を贈与したものと認め、その差額に相当する金額(別表二(二)欄記載の金額で、その合計額は、一〇、七三〇、一四二円である。)を、法人税法九条三項にいわゆる寄附金として取り扱い、同法施行規則七条の規定により、損金算入限度額を計算し、右寄附金中、その限度額をこえる部分一〇、六六七、六六二円は、本件事業年度における原告の所得計算上、損金に算入しないこととしたことが、違法であるかどうかに帰着する。以下此の点につき判断する。

三、およそ、営利法人については、それが利潤追求の組織体であるかぎり、理論的には、等価交換の法則に支配され、資産の低廉または高価な価格による譲渡もしくは譲受というようなことはあまり起こりえない筈である。しかしながら、現実は必ずしも諸条件が単純でなく、また擬装取引もあり、単純には法人の計算をそのまま是認することが適当でない場合も存在することは否定し難く、かかる場合、法人税法上独自の損益計算がなされることも許されるものと解すべきところ、その一例として、法人がその有する資産を、時価に比し、著しく低い価格で譲渡した場合において、その譲渡価格と譲渡時におけるその資産の価格(時価)との差額に相当する金額を相手方に贈与したと認められるときは、その差額に相当する金額は、法人税法上、相手方に対する寄附金として取り扱われるべきものであると解するのが相当である。

(イ)  ところで、所得税法施行規則二条によれば「法第五条の二第二項の著しく低い価額は、資産の譲渡の時における価額の二分の一に満たない価額とする。」と規定され、時価による譲渡とみなす低額譲渡の範囲が明記されているけれども、法人税法上は、そのような規定がないため、前記のいわゆる「時価に比し著しく低い価格」を具体的に明確にいうことは困難であるが、譲渡価格が低いため、課税上の弊害を伴うとか、その他諸般の事情を総合的に考慮して判断すべきことは、いう迄もないところである。

(ロ)  次に前記のいわゆる「贈与したと認められるとき」とは、譲渡資産の時価と譲渡価格との差額について、任意且つ無償で提供され、相手方もその差額について、何らの犠牲を伴わずに、受益していると認められるときであつて、これに反し、合理的な理由による場合は、贈与したものと認められないものと解すべきである。従つて、法人が、その特約店等に対し、自己の製品等の広告宣伝のため、これに適する固定資産(例えば自動車、興行用のどん帳等)を著しく低い対価で譲渡しても、寄附金とはみなされず、繰延費用(広告宣伝費)として償却することが認められているのである。

(ハ)  結局、時価と低廉譲渡価格との差額は、譲渡した法人にとつては、「寄附金」と全く同様に取り扱われ、従つて法人税法九条三項、同法施行規則七条に則り、右差額中、損金算入限度額を越える部分は、損金に算入されないことになるのである。

四、そこで、先づ本件譲渡資産(但し、半製品は除く。以下本件譲渡資産というときは、半製品を除く趣旨である。)の適正な時価について、被告らは、別表二(イ)欄記載の帳簿価格である旨主張するのに対し、原告は別表二(ハ)欄記載の譲渡価格である旨主張して争うので、この点について考察する。

(一)  証人岩井洸、同立石義雄、同寺村年明、同宮崎勝美の各証言、原告代表者蔦屋幸三郎本人尋問の結果を総合すると、原告会社は昭和二七年に設立され、農林省から割当を受けた輸入粗糖の精糖並びに製菓を業としていたが、同三一年三月頃、従来の製菓部門を独立させ、これを別法人とするため、資本金三、〇〇〇、〇〇〇円の訴外会社が設立されたこと(その設立の動機ないし目的が、被告ら主張のごとく、原告に対する法人税等の追徴による資産減少を免れる目的であつたか、或いは原告主張のごとく製糖部門の不振のため、従業員の生活確保がその目的であつたかの点までの究明はさて措く。)、その際原告会社の製菓部門で働いていた従業員は一旦同社を退職、その殆んど全員が、その退職金を訴外会社の資本金に出資して、同社に勤めることになるとともに、原告会社が製菓業のため使用していた一切の機械器具等(本件譲渡資産)は、訴外会社において、有姿のまま一括して買受け(土地、建物については、当初六ケ月間は原告から賃借し、その後区役所の評価額で買受けた。)、その殆んどのものを、従前と殆んど同一場所で同一事業目的(製菓)に稼働せしめたことが認められ、以上の認定に反する証拠はない。右認定事実によれば、訴外会社は、原告会社の従前の製菓部門の人的並びに物的構成要素を実質的には、殆んどそのまま承継した会社であつて、いわば原告の営業の一部を包括的に譲受けたものとみうるものである。

(二)  さて、種々の場合に、法人が有する資産の評価がなされるのであるが、通常は継続企業の決算時になされ、その際評価された資産が貸借対照表財産目録に掲示されることになるのであるが、かかる場合の評価基準を何に求めるべきかについては、従来から貸借対照表評価論として多く議論されているところで、いわゆる原価主義、時価主張、低価主義、時価以下主義が存在する。右にいわゆる時価主義は、評価の基準を評価時点における時価、即ち市場価格におくものであるが、そもそも固定資産は売却を予定しない資産であるから、市価の判定は困難であり、評価人の主観が大きく作用し、実際上採用されず、取得価格又は製作価格から減価償却を行う原価主義が採用され、法人税法も原則として原価主義に立脚し、ただ法人税法施行規則一七条、一七条の二により法人の選択による時価の範囲内においての資産の評価損益が課税所得に反映するものとされているが、この場合でも、法人の決算期において、進んで評価損益を計算しない限りは問題とならないのである。従つて普通貸借対照表に掲示される資産の帳簿価格は、必ずしも、そのまま時価であると即断することは出来ない。もつとも実際上、時価と帳簿価格の不一致が問題になるのは、土地、建物であつて、その他の資産については、余り問題にならないのである。

(三)  ところが、法人は、経営上の必要から、営業の全部又は一部の売買譲渡を行うことがあり、かかる場合、その財産は個々別々に移転するのではなく、包括的に収益力のある有機体として移転するから、評価も個々の財産の処分価値というよりは、むしろ総体的な、使用収益価値を重視してなされるべきであると解するのが相当である。これに反し、企業の破産又は解散に基く清算の場合は、もはや企業の継続を前提とせず、直ちに所有財産を処分して換金しなければならないから、いわゆる強制処分価値又は清算価値によつて評価がなされるものである。

(四)  以上の点を本件につき考察すると、訴外会社が原告から本件譲渡資産を譲受けた経緯、及び態様が前示(一)認定のごときものである以上、本件譲渡資産の時価評価は、個々の資産の個別的処分価値に着目すべきでなく、むしろ包括的に収益力のある有機体と目すべきものが、有姿のまま将来継続して使用収益される点に重点を置くべきものであり、このような場合、いわゆる公正な市場価格の確認は困難であるので、その帳簿価格を以つて適正な時価と認めるのが相当である。もつとも、その帳簿価格自体が妥当でない場合、例えば、減価償却資産について、正規の減価償却が実施されていない場合、棚卸資産について、法人税法施行規則二〇条に定められた評価方法が正規に実施されていない場合は、その帳簿価格自体が正確なものでないから、これによることは出来ないわけであるが、成立に争いのない甲第一号証の三、証人岩井洸、同立石義雄、同寺村年明の各証言によると、本件譲渡資産中固定資産(機械器具、車輛運搬具、及び什器、備品)については、その大半は取得後一年もしくは二年以内のもので、且つ「定率法」による正規の減価償却計算がなされていること、棚卸資産(原材料、製品、補助材料)については、先入先出法によつて正規に評価されていたことが認められるので、本件譲渡資産の帳簿価格自体についても、特に問題とすべき点は見当らないのである。これに対し、原告は、別表二(ハ)欄記載の譲渡価格こそ適正な時価であると主張するところ、原告代表者蔦屋幸三郎本人尋問の結果から真正に成立したと認められる甲第二号証の一、四、六、証人日高友治の証言によつて真正に成立したと認められる甲第二号証の二、証人尾崎守の証言によつて真正に成立したと認められる甲第二号証の三、証人土倉庄平の証言によつて真正に成立したと認められる甲第二号証の五、証人加藤高勝の証言によつて真正に成立したと認められる甲第二号証の七、証人日高友治、同尾崎守、同土倉庄平、同加藤高勝、同宮崎勝美の各証言、並びに原告代表者蔦屋幸三郎本人尋問の結果を総合すると、原告の譲渡価格は、右各書証記載の各評価人が、本件譲渡資産の帳簿価格も調査せず、且つ誰が、どのような事情で譲受けるかについての説明も受けないまま、統一的に明確な基準によらないで評価した価格を全くそのまま採用して定められたもので、本件譲渡資産の帳簿価格とは無関係な価格であると認められるので、原告の前記主張は採用できない。

五、前示四(一)の訴外会社が設立された経緯、本件譲渡資産の時価と譲渡価格との間には、著しい差があること、その他弁論の全趣旨を総合すると、原告は、訴外会社に対し、本件譲渡資産を、譲渡時の時価に比し、著しく低い価格で譲渡し、これによつてその譲渡価格と時価との差額に相当する金額(別表二(二)欄記載の一〇、七三〇、一四二円)を贈与したものと認められ、法人税法上寄附金として取り扱うのが相当である。証人宮崎勝美の証言及び原告代表者蔦屋幸三郎本人尋問の結果中、右認定に反する部分は採用し難く、その他右認定を左右するに足りる証拠はない。

六、ところで、法人税法九条三項、同法施行規則七条一項によれば、法人が、各事業年度においてなした寄附金のうち、同規則により計算された損金算入限度額を超える部分は、法人の所得の計算上、損金に算入されないのである。従つて、先づ損金算入限度額を計算する。

法人税法施行規則七条一項によれば、普通法人(公益法人等以外の法人)の各事業年度において支出した寄附金の損金算入の限度額は、資本金額の一、〇〇〇分の二・五に相当する金額(以下単に資本金基準額と称する。)と所得金額の一〇〇分の二・五に相当する金額(以下単に所得基準額と称する。)との合計額の二分の一に相当する金額である。そして右「資本金額」とは、同条三項によれば、当該事業年度終了の日における資本の金額、出資金額、株式金額及び出資金額の合計額又は基金及び資産再評価法(昭和二五年法律第一一〇号)の規定による再評価積立金額の合計金額に当該事業年度の月数を乗じたものを一二分して計算した金額であり、「右所得金額」とは、同条五項、六項によれば、繰越欠損金の損金算入、法人税から控除する納付済の所得税額、外国の法人税額、租税特別措置法(昭和二一年法律第一五号)七条の七の各規定を適用しないで計算し、且つ法人が当該事業年度において貸倒準備金勘定又は輸出損失準備金勘定に繰り入れた金額があるときは、当該金額の金額を損金に算入し、法人が当該事業年度においてなした又はなすべきであつた寄附金は、これを損金に算入しないで計算した所得金額である。(以上の計算の順序等については、法人税法施行細則(別表二)及び(別表六)参照)

1、資本金基準額について。

成立に争いのない甲第一号証の一によれば原告の本件事業年度終了の日における資本金額は、一五、〇〇〇、〇〇〇円、期末再評価積立金は零と認められ、且つ本件事業年度の月数は、一二ケ月であることは当事者間に争いがないから、資本金基準額は、三二、五〇〇円

(13,000,000円×12/12×2.5/1,000)である。

2、所得基準額について。

前出甲第一号証の一により原告の本件事業年度の欠損金五、八六四、〇八五円に、税務計算上損金に算入されない金額の合計額一〇、三一七、六九一円(別表一の番号(2)ないし(23))を加算し、これらの合計額から、税務計算上所得金額から控除すべきものの金額一一、四八五、二九八円(別表一の番号(25)ないし(33))を減算すると、その差引所得金額は七、〇三一、六九二円(欠損、前記法人税法施行細則別表二、別表六の所得金額仮計の金額である。)となり、この金額に、原告の訴外会社に対する寄附金として取り扱われる金額一〇、七三〇、一四二円を加算した結果その合計額は、三、六九八、四五〇円となる。従つて所得基準額は九二、四六一円(3,698,450円×2.5/100)である。

3、損金算入限度額について。

損金算入限度額は右資本金基準額三二、五〇〇円と所得基準額九二、四六一円の合計額一二四、九六一円の二分の一相当額であるから、六二、四八〇円である。

4、損金不算入額について。

損金不算入額は、寄附金として取り扱われる金額一〇、七三〇、一四二円のうち、右損金算入限度額六二、四八〇円を超える金額であるから一〇、六六七、六六二円である。

七、そうだとすると、被告北税務署長が、右寄附金のうち損金不算入額一〇、六六七、六六二円を原告の所得を算出するに当り、益金に加算したことに何ら違法の点はない。従つて被告らのなした別表一に基づく所得計算は、すべて正当で、原告の本件事業年度の所得金額は、三、六三五、九七〇円となる。

よつて、被告北税務署長が、原告の本件事業年度の所得金額を三、六三五、九〇〇円(前記三、六三五、九七〇円のうち七〇円は、国等の債権債務等の金額の端数計算に関する法律五条一項により切り捨て。)法人税額を一、四二九、三六〇円、重加算税額を七一四、五〇〇円と更正した決定及び被告大阪国税局長がこれを相当と認め、原告の審査請求を棄却した決定は、いずれも、適法で、原告の被告らに対する本訴請求は失当であるからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について、民訴法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 入江菊之助 木村幸男 元吉麗子)

別表一

番号

事項

被告らの計算(円)

原告の計算(円)

1

貸借対照表上の損失金額

五、八六四、〇八五

五、八六四、〇八五

小計(A)

五、八六四、〇八五

五、八六四、〇八五

2

別口勘定脱漏資産(仮払金)

二、一四九、七六九

3

同右(貸付金)

五七〇、〇〇〇

4

同右(車輌運搬具)

五〇〇、〇〇〇

5

同右架空負債(借入金計上を否認したもの)

一、六八二、九二二

6

同右

九〇、〇〇〇

7

同右(支払手形計上を否認したもの)

三一四、八〇〇

8

同右(仮受金計上を否認したもの)

二、〇〇〇、〇〇〇

9

同右前期脱漏負債(未払金)を当期損金に計上したもの

一八五、八六三

10

脱漏資産(未収利息)

五一九、二六三

11

同右(仮払金)

七六、九五〇

12

架空負債(買掛金計上を否認したもの)

二七八、〇八四

13

同右(預り金計上を否認したもの)

三三一、〇六七

14

同右(〃)

三七、七一〇

15

役員賞与引当金の目的支出額

八九、二五〇

16

減価償却超過額

一六、五八〇

17

損金計上の法人税額

六一二、二二〇

18

損金計上の府民税及び市民税額

九一、三〇〇

三九、一七一

19

損金消却の仮払府民税額

二〇、五九三

20

仮払市民税の消却額

三〇、八九〇

21

仮払法人税の消却額

六〇〇、六八〇

22

前記認容済の未納事業税の当期損金計上額

九二、八九〇

23

仮払中間分事業税の消却額

二六、八六〇

24

寄附金の損金不算入額

一〇、六六七、六六二

小計(B)

二〇、九八五、三五三

三九、一七一

25

別口勘定前記架空負債(支払手形)を当期益金に計上したもの

一、〇〇〇、〇〇〇

26

同右(預り金)

一〇〇、〇〇〇

27

同右(未払金)

二六〇、七五四

28

脱漏負債(未払消費税)

八、六六四、六〇〇

29

役員賞与引当金の取崩額

八九、二五〇

30

減価償却超過額の当期認容額

一〇〇、〇四四

31

仮払整理の法人税額

六一二、二二〇

32

税金引当金の目的外支出額

六三一、五七〇

33

前記中間分事業税の当期納付額

二六、八六〇

小計(C)

一一、四八五、二九八

所得金額B-(A+C)

三、六三五、九七〇

△五、八二四、九一四

別表二

科目

(イ)譲渡前帳簿価格

(ロ)時価査定額

(ハ)譲渡価格

(ニ)低額譲渡により

贈与と認定した金額((ロ)―(ハ))

機械器具

9,728,248

9,728,248

1,546,360

8,181,888

車輌運搬具

2,651,416

2,651,416

1,486,494

1,164,922

什器備品

909,011

909,011

515,900

393,111

原材料

1,488,618

1,488,618

866,282

622,336

製品

482,027

482,027

226,156

255,871

半製品

357,711

214,626

214,626

0

補助材料

112,014

112,014

0

112,014

合計

15,729,045

15,585,960

4,855,818

10,730,142

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例